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その他大勢から抜け出す「知的生産」の技術

1.仕事は「スポーツ」と考えるとうまくいく

今仕事をしている人、これから仕事をしていく人が成果を出すためには、「頭がいい」ことは非常に重要です。そして、この「頭のよさ」は、「学校の成績がいい」ことではありません。学校の勉強、試験勉強はもちろん仕事に生かせますが、仕事における頭のよさは、学校の勉強における頭のよさとはちょっと違うのです。

これは、スポーツで考えればわかりやすいと思います。
たとえば体操の内村航平選手がインタビューで、バスケットボールかバレーボールをしたときには、それほどうまくできなかったと話していました。
内村選手といえば、これまでいくつもの金メダルをとっている選手です。世界最高の運動神経の持ち主と言っても過言ではないでしょう。その内村選手でも、やったことのないスポーツはうまくできない。
どんなに運動神経よく生まれても、サッカーをしなければサッカーがうまくなることはなく、バスケをやらなければバスケがうまくできることはないのです。
「頭のよさ」も同様です。勉強なのか仕事なのか──仕事の中でも色々別れますが──その目的によって、求められる能力もその鍛え方も変わってきます。

では、仕事をしている人、これから仕事をしていく人が鍛えるべき「頭のよさ」とは何でしょうか。
私は、その一つに「チームで成果をあげていく能力」があると考えています。どんな仕事でも、自分一人だけで完結するものはまずありません。一見、一人で回しているようでも、必ず誰かのサポートを受けていたり、あなたの仕事が誰かのサポートとなっていたりします。
私は明治大学で教員をしていますが、大学教授ですら、チームで協力することが求められます。研究をして、成果を上げることと同じかそれ以上に、教職員での連携が求められているのです。

チームとして成果を上げていくためには、メンバーそれぞれが相手の考えをすばやく理解すること、自分で積極的に動くことが不可欠です。すると、自然とその周囲の人も動きやすくなっていく。各自が他の人のやっていることを見ながら、自分自身もサッと動けるような準備ができているため、何かあったときにも、リカバリーやフォローができる。それが結果として、チームの成果に結びつきます。
企業が採りたい人材も、この、チームワークで仕事ができる人なのです。

スポーツは、練習することで上達していきます。仕事における頭のよさも同様に、トレーニング次第で鍛えていくことができます。
もし、あなたが職場で「もう少し頭を働かせてくれると助かるんだけど」と思われていたとしても、採用面接で「求めている人材と違う」と思われていたとしても、この連載コラムでいくつかの簡単なコツを知るだけで、その評価をガラッと変えていくことができるのです。
もしあなたが同僚や部下に対してこのように思っている場合には、こっそりこのコラムの存在を教えてあげるといいでしょう。周囲から一歩、抜きん出た人物になれるばかりでなく、その人が所属するチームにもいい変化が起こり、成果につながっていきます。

さあこれから、「仕事における頭のよさ」を鍛えていきましょう。

著者プロフィール

齋藤 孝(さいとう・たかし)

1960年静岡県生まれ。東京大学法学部卒業。同大大学院教育学研究科博士課程等を経て、明治大学文学部教授。
専門は教育学、身体論、コミュニケーション論。
著書には、『“ちょっと尊敬”される人になる本』(三笠書房)、『眼力』(三笠書房《知的生きかた文庫》)、『声に出して読みたい日本語』(草思社、毎日出版文化賞特別賞受賞)、『雑談力が上がる話し方』(ダイヤモンド社)、訳書には、『夢を実現する戦略ノート』『求心力──人を動かす10の鉄則』(ジョン・C・マクスウェル著、三笠書房)など多数がある。