”の検索結果
再検索

その他大勢から抜け出す「知的生産」の技術

6.なぜか魅力的な人の共通点

私はテレビをよく見ます。中でもドキュメンタリー番組は好きで、色々なジャンルの人のドキュメンタリーを見るようにしています。それは、ドキュメンタリーを見ることでモチベーションを上げることができるからです。
ドキュメンタリーに登場する人は、何かの分野を引っ張っています。そういう人はたいてい、「こんなに勉強しているんだ」というほど、勉強熱心です。その姿を見ると自分自身ももっと勉強や仕事をしなければという気持ちになり、自分の中の奥のほうに火がつくような感覚を覚えるのです。この感覚が、知的好奇心につながっていきます。

知的好奇心というのは、人が何かに対して燃えている炎が自分に乗り移ってくる感じを指すと思います。自分の興味あることをどんどん勉強することももちろんありますが、それだけではないのです。
たとえば、少し前のことになりますが、山中伸弥教授がノーベル賞を受賞しました。あのニュースを見て影響を受けた日本人は何百万人にものぼるでしょう。違う領域であっても、知的好奇心を持って燃えている人を見ると、自分にいい変化を起こすことができます。
そういう、変化のタネになるようなニュースは世の中に日々、満ちあふれています。それを、ドキュメンタリー番組を通して、キャッチしていくわけです。

この、人のやる気から炎をもらう方法は、インタビュー記事でも有効です。
最近では、俳優の堺雅人さんの記事を読みました。
その記事によると、ドラマの収録はものすごく待ち時間が長いそうです。2時間ドラマでも2週間や10日かけて撮影し、すごくタイトなスケジュールなのだそうです。でも、そのすべてが忙しいかというと、待つ時間のほうが長い。自分がいなくてもいい場面でも、そこに待機しないといけない。もっと効率よくできるかもと思いながらも、皆がそうやって動いているから、参加している人は、そのようにしないといけないわけです。
最近、シリーズ最新刊『銀翼のイカロス』が刊行されたテレビドラマ、『半沢直樹』の最終回の大会議室の場面は、テイクが10回だったそうです。私たちが見ているのは1シーンですが、それは同じようなことを何回もやって、いろいろな角度から撮っているのです。
そこに出演していた役者さんから直接話を聞いたのですが、その役者さんは、
「堺雅人さんはすごい。他の人は声が枯れ気味になるところを、彼だけは声が張って、全然疲れないんだよ。すごいな、彼は」と言っていました。
そういうインタビューを何本か読むと、どの仕事も大変で、皆頑張っているんだなとわかる。その影響を受けて、自分自身もやる気になる。
どんな人の記事でも、読めば必ず、発見があります。

できればメディアに出ている人だけでなく、あなたの身の回りの人からも、話を聞くことです。失敗談も含めて、近所のお店や友人の話も聞いてみる。「世間を知る」ことが重要なのです。世間知らずから脱却することが、大人の頭のよさです。
世間知らずのよさも、若い頃にはあります。常識にはとらわれない。そして、枠をあまり感じずに、どんどん広げていく。大きな発見のときには、そういうことがあると思います。
でも、実は世間知らずのように見える人でも、成功を収める人はスタンダードな勉強もしていることが多い。
新しいものに対しても、つねに吸収していく態度、知的好奇心を持ち続けていくことで、次のものもどんどん面白くなります。
いろいろな人や媒体から情報を大量に仕入れていくことで、つねに知的好奇心を回し続けることができるのです。

著者プロフィール

齋藤 孝(さいとう・たかし)

1960年静岡県生まれ。東京大学法学部卒業。同大大学院教育学研究科博士課程等を経て、明治大学文学部教授。
専門は教育学、身体論、コミュニケーション論。
著書には、『“ちょっと尊敬”される人になる本』(三笠書房)、『眼力』(三笠書房《知的生きかた文庫》)、『声に出して読みたい日本語』(草思社、毎日出版文化賞特別賞受賞)、『雑談力が上がる話し方』(ダイヤモンド社)、訳書には、『夢を実現する戦略ノート』『求心力──人を動かす10の鉄則』(ジョン・C・マクスウェル著、三笠書房)など多数がある。